古来から芳香植物は各国で医療目的に使用されてきました。その芳香療法が大きく発展した理由は芳香植物から精油を抽出する方法が進化したことです。10世紀末、アラブ人医師のイブン・シーナが錬金術の過程でバラの精油を生み出しました。その方法が水蒸気蒸留法です。

水蒸気蒸留法は原料となる植物を蒸留釜に入れ蒸気を送り込みます。蒸気の熱によって植物の細胞壁は破壊され、エッセンスは蒸気と共に冷却タンクに通じるパイプを通り液体となります。この蒸留液は容器に集められ、水より軽い成分は水面に浮き、水と分離されます。この成分が精油(エッセンシャルオイル)です。残りの蒸留水も芳香蒸留水(ハイドロゾル、フローラルウォーター)として価値があります。

抽出する精油によって蒸留時間は異なります。蒸留の際、高温・高圧を与え蒸留時間を短くすると効率よく精油が生産されますが、有効成分を多く含んだ精油を得るためには低温でゆっくりと時間をかけて蒸留する必要があります。
精油によっては鉄を腐食させたり、酸化物を形成するため、蒸留装置はステンレス鋼製のものが使われます。

通常、精油とは水蒸気蒸留法によって抽出されたものを指しますが、アロマテラピーでは他の抽出方法によって得られるエッセンスやアブソリュートも精油と呼ばれることがあります。

水蒸気蒸留法の他に圧搾法、溶剤抽出法などの抽出方法があります。植物の種類によって芳香成分の性質が異なるため、適切な抽出方法が用いられます。大部分の精油は水蒸気蒸留法によって抽出されています。