精油の作用は化学成分の研究により証明されています。しかし、精油に含まれる単一成分が精油の作用をそのまま表すと言い切ることはできません。精油は数十から数百の異なった分子をもつ複雑な混合物です。精油と合成香料の大きな違いはここにあり、天然植物から抽出された精油は成分同士が有益な作用を高めあい、毒性を抑制しています。

精油の作用、芳香は主成分の働きによるところが大きいのですが、少量含まれている他の成分を抜き取る事により、精油の効力は落ち、芳香は異なったものになります。精油は全ての成分が同時に働く相乗効果をもっています。効果が証明されている個々の成分を症状に適用するよりも、2つ以上の成分が合わさった混合物を用いた方が、より高い効果を得ることができます。相乗効果は2種類以上の異なった精油を用いる事でも大きくなります。

また、精油によっては皮膚に刺激を与えたり、毒性をもつ成分が含まれています。これらの成分が多く含まれる精油は注意が必要です。しかし、刺激性のある単一成分と比べ、精油にはそれほど危険性はありません。精油は刺激性、毒性をもつ成分の働きを他の成分が抑制しているからです。2種類以上の精油を組み合わせるとさらに、その望まれない作用を抑制することもあります。例えば、皮膚刺激を与える成分のシトラールを多く含むレモングラスに、d-リモネンを多く含むグレープフルーツやオレンジをブレンドすると刺激性を抑制することができます。

これらが、アロマテラピーでは完全に天然である精油を使うことが求められる理由です。香料業界では一定の香りを供給する義務があるため、テルペン類を抜き取る事があります。この場合、アロマテラピーとしての精油の効果はほとんど期待することができません。精油によっては光毒性の危険を避けるためフロクマリン類を除去するフロクマリンフリーがありますが、これは効果を優先するか安全を優先するか使用者の判断に任されます。
天然の成分だからこそ安全ということにはなりません。精油の成分を参考にしながら、有効に活用してください。